クラシア

COLUMN

【 工務店さん不動産会社さんとともに住宅業界を盛り上げる 】その100

2020.9.4

工務店支援

正しい理解のうえで制震装置を採用しているのか!?
建築士としての意見投稿です。
制震装置は大きく分けて、ゴム系とオイルダンパー系の2つに分類できます。
ゴム系とオイルダンパー系の導入比率は8:2となっています。
ゴム系は大手メーカーが占めていますので、導入比率が高いわけです。
ここで考えたいのは、制震装置として本当にゴム系が良いのかということ。
地震で建物が揺れは始めたときに、建物が受ける衝撃を軽減することが、【 制震 】の目的です。
対して、耐震等級3や2という、【 耐震 】というものは、耐えること(変形抑制)が目的で制震とはその目的が違います。
話を元に戻しますと、ゴム系制震装置の怖いところが、建物が大きく変形しないと、その効力を発揮しないということ。
建物が揺れはじめ、耐力壁のプラスターボードが損傷、その後、合板が損傷、そして、筋交いが損傷という流れになりますが、筋交いが損傷した程度では、ゴム系の制震装置はほとんどその効力を発揮していないのです。
建物が100ミリ変形したころに、やっと、それなりの効力を発揮することになります。
建物が100ミリ変形するとは、地震保険の定義で言えば、全半壊のレベルです。元に戻る弾性の領域をはるかに通り越しているのです。
もう元には戻らないほど建物が損傷しているので、住み続けることはできません。
ゴム系制震装置の目的は建物の倒壊を防ぐこといえそうです。
人の生命の維持には貢献できます。
設置する意味はありますが、住み続けることを考えると、???です。
ゴム系に対して、オイルダンパー系は、揺れはじめ直後から効力を発揮し始め、プラスターボードが損傷するころには、ほぼ最大限の減衰力(揺れの吸収力)を発揮しています。
合板や筋交いは損傷していないのです。
建物の損傷を最小限にとどめ、住み続けられるという可能性が高まります。
制震装置を選定するときに、この点を考慮して採用を決定いただけると、より意味のある制震対策になると思います。
ゴム系とオイルダンパー系の本当の違い・・・。
メーカーの提案だけを聞いて採用すると怖いことになってしまいます。
久しぶりの技術的投稿でした。